読書感想文③一橋文哉『人を殺してみたかった 名古屋大学女子学生・殺人事件の真相』
やっと読書感想文が書ける〜。
少し前に「あなたの番です」というドラマがすごく流行りましたよね。
私も最後3回だけめちゃハマりました笑。
結局西野七瀬さん演じる「黒島沙和」が黒幕だったわけですが、彼女は「人を殺すことを愛している」と言っていました。
どうにも止められない殺人衝動。
私は純粋になぜ? と思い、現実にも同じような犯罪者が少なからずいることを思い出しました。
常人には考えられないそんな人たちへの「なぜ?」を解消しようと、この本を読みました。
結論から言うと、今その知的好奇心は完全には満たされていません。
それも当然です。人の数だけ動機があり事情がある、一概には言えないものだから。思っていたより心は複雑なものなのですね。
でも、彼らと私も同じ人間なんだ、と思いました。
この本では、名古屋大学に通う女子大生が自宅アパートで老婦人を殺害した事件を中心に、類似の「人を殺してみたかった系」の殺人事件にも数多く言及しています。
結局、犯人の彼らに共通するのは、自分の存在を認めてもらう機会が少なかったということではないでしょうか。
ここが自分とも共通する部分だと思ったのです。
私は幸いなことに、家族にも彼氏にも数少ないけれど友達にも、自分の存在を認められていると感じています。あなたはこの世に存在していい、と思わせてくれる感覚です。
でも、その感覚が不安定になることも多々ありました。
思春期の親との衝突、不幸せな恋愛、この2つが主なトリガーとして思い起こされます。
自分の存在を確固たるものにしてくれる他者との関係が揺れ動いた時、人は大きく揺さぶられます。この状態が常に続くと考えると…。
前に何かの記事でも書きましたが、よっぽど深く関わる人間でないと、この欲求は満たすことができないと思います。
だから、結局犯罪者の家庭環境に原因が帰結する。特にまだ若い場合。家庭が最も深く関われる・関わる場所だから。
同時に、「普通に」育てる・育つのはすごく難しいことだと感じました。
結果的に凶悪殺人を犯した彼らも途中までは「普通」だったわけで、殺人者となったのは徐々なる変化によってだったのです。
過度でも過小でもない愛を注ぐことが「普通」に育つ一番の方法かなと考えますが、それもまた難しい。
難しいことだらけ。
だから、私だって、皆さんだって、これから殺人者になる可能性はゼロではない。
そう考えると恐ろしくなります。生きることの難しさに途方にくれます。
正直にいうと、私には理解が及ばない部分も本の中にはありました。
この名古屋大学の子は「新たなタイプの犯罪者」だということです。
多分、私の現代社会の俯瞰・理解が足りないから分からないのだと思います。
だから、わかる時を気長に待ちます。
読書感想文の初めに書いた『夏の陰』ですが、この2冊が通じるところもありました。
フィクション・ノンフィクションの違いは、ここでは違いではありません。
私たちは普段、犯罪の過程や結果と簡単な動機のみ、数分のニュースで知ります。ごくごく一部の切り取られた部分だけを目にします。
でも犯罪って、様々なお肌トラブルの結果表面にできてしまったデキモノのように、複雑すぎる人間関係の綻びとなった部分なのですね。
当たり前じゃん、と思う方もいると思います。私も頭では理解していたつもりでしたが、なんせ実体験がない。なので、実体験とは程遠いですが、読書を通して他者の経験を自分の中に取り込みました。その結果、感覚を伴ってこの結論が出てきました。
このデキモノ、犯罪をなくすために、社会では多様な役割の人が奮闘しています。
犯罪・政治・生活…事象ごとに名前はついていますが、切り離せるものではない、と感じることができました。
分からないと行動ができない。この読書体験が行動を始める一歩になったらいいなと思います。